“刺激・臭気・不安定性”を超えて──システアミン処方の可能性と進化
- Tomohiro Kangori

- 9月24日
- 読了時間: 3分

【前回のおさらい】
前回のコラムでは、ハイドロキノンの国際的な規制状況と、有色人種(特にアジア人)におけるシミ・肝斑ケアの再考の必要性についてご紹介しました。
その代替として注目されるのが、自然由来で多段階作用を持つ「システアミン」です。
今回は、システアミンのメカニズムと処方化における課題、それを克服する技術革新について解説いたします。
【多段階に作用するシステアミンの脱色素メカニズム】
肌の中でメラニン(しみのもと)は、メラノジェネシスと呼ばれるメラニン生成経路により生成されます。
チロシン(アミノ酸)から酵素「チロシナーゼ」の働きで次々と変化し(L-DOPA → ドーパキノン など)、最後に黒い色素「ユーメラニン」「フェオメラニン」へと変わる「段階的な化学反応の連鎖」によって作られるのです。
システアミンは、以下のようにメラニン生成経路に多段階で干渉することで、色素沈着の抑制に働きかけます。

✅ 主な作用機序:
✔チロシナーゼおよびペルオキシダーゼの阻害
→ メラニン生成の初期反応、インドール類の酸化的重合反応を担い、ユーメラニン色素生成をブロック
✔グルタチオン(GSH)濃度の増強
→ 酸化ストレスを抑えるグルタチオンを増やし、メラニンの酸化的重合を遅延
✔金属キレート作用(鉄・銅)
→ 酵素活性を支える金属イオンを封じ、活性酸素(ROS)生成を抑える
✔ドーパキノン・スカベンジャー作用
→ 濃い色のユーメラニンの生成を抑制し、目立ちにくい淡色のフェオメラニンへの変換を促進
このように、システアミンはメラニン生成における複数の段階にアプローチできる成分、いわば「多段階作用型の色素抑制メカニズム」として、臨床応用への期待が高まっています。
しかし、システアミンには克服すべき大きな3つの課題がありました。
【システアミンの課題とその克服】
① 不安定性 空気・光・pHに非常に敏感で、酸化・分解を起こしやすい
② 強い臭い 揮発性の高い硫黄化合物のにおいがあり、日常使用を妨げる
③ 刺激性 チオール基の反応性により、赤み・刺激が出やすい
これらの問題に対し、今回の講演で紹介されたのが、アルファサイエンス独自の処方設計:NextGen®テクノロジーです。

【NextGen®安定化技術のポイント】
システアミンの塩酸塩(HCl)化によって、分子の揮発性と臭気を大幅に抑制
イオン交換・電子移動の制御によって、処方全体を安定化
抗酸化成分との協働処方で、肌への刺激を緩和し、作用効果を相乗的に強化
洗い流し不要・防腐剤フリー・pH3.85処方で日常使用にも適応可能な処方設計
このように、従来は「塗っても洗い流すもの」として限られていたシステアミンの使用が美容液となり、スキンケアに取り入れられるフェーズへ進化しています。

【臨床現場での今後の可能性】
ピュアビタミンCやその他自然由来成分の併用によるW抗酸化アプローチ
レーザー治療をはじめとする美容施術との併用時の施術前のプレケアと色素沈着予防
肝斑やPIHへの中長期的ケアとしての活用
すでに複数の論文・査読付き報告において、色素沈着の明らかな改善が示されており、今後、より多くの臨床応用例が積み重なることが期待されています。
【まとめ】
ハイドロキノンの課題を受け、次なる代替成分としてシステアミンが米国だけでなく、日本国内でも着実に注目されています。
科学的根拠と製剤技術の両面から、今後の色素沈着治療を支える可能性を持つこの成分に、ぜひご注目ください。

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